「有料老人ホームの選び方」という書籍やインターネットの記事をよく見かけます。ためしに、「有料老人ホーム 選び方」というキーワードで検索してみてください。何十件もの記事が出てきますが・・・
どの記事も書いてあることはほとんど変わりません。
・入居の目的を明確にしましょう。
・情報収集しましょう。
・必ず見学しましょう。
・見学のチェックポイントは・・・
・契約内容をよく確認しましょう。
・・・という感じです。
どれも間違いではありませんが、お話はそれほど単純ではありません。
たとえば、「○○ホームでは、職員を法定の基準より多く配置しています。入居者と職員の比率は2.5対1です。」と言われたときに、「2.5対1」がどのくらい手厚い職員配置かわかる人がどれだけいるでしょうか?
職員配置が「2.5対1」なら、5人の入居者に常時2人の職員がついていると思ってよいのでしょうか?
そもそも、職員の人数が多ければ多いほど、いい介護をしていると言えるのでしょうか?
職員数の問題ひとつをとっても、介護の質と経営に与える影響を把握するのは容易ではないのです。一口に「情報収集」と言っても、集めた情報を読み解けなければ意味がありません。
もう一つ、いつまでも同じ状態が続くとは限らないことも問題です。
ビジネスの世界では、会社の買収や合併は日常茶飯事です。有料老人ホームの運営会社も例外ではありません。業界大手の某社の親会社が、わずか2年余りの間に2回も変わってしまった例もあります。
親会社が変われば経営方針も変わるわけですから、介護現場が買収や合併の影響を受けないということはまずあり得ません。
新しい親会社が過度な経営合理化に走ることもあり得ます。そんなときは、利用者の権利を主張して自分を守らなくてはなりません。
また、はじめから変化を予測できていれば、有料老人ホームにすべてを託そうとは考えず、第2、第3のプランを用意しておこうという発想も出てきます。
残念ながら、何かに頼ることで安心が得られる時代は終わってしまいました。世知辛いお話ですが、これからは常に戦略的にライフプランを考え続ける必要がありそうです。
(谷口 一郎)