遺言についてはいろいろな考え方があると思いますが、私は「はじめから完璧なものを作ろうと思わない」ことが鍵だと考えています。
一般的な解説では、まず民法における遺言書の3類型(自筆証書、秘密証書、公正証書)の長所短所を説明し、法的な安全性、確実性を重視して公正証書遺言を勧めていることが多いようです。
公正証書遺言が安全・確実であることは事実なのですが、費用と手間暇がかかるやり方なので、相当な決意を持って作らないと後悔することになりかねません。そのために「はじめの一歩」を踏み出せない方も多いのではないかと思います。
面倒だし・・・自分や家族の状況が変わったら無駄になるし・・・
ごもっともです。
そのようにお考えの方は、まずは自筆証書遺言を書いてみてはいかがでしょうか?
専門家は自筆証書遺言の欠点(紛失や形式不備のリスク等)を嫌うことが多いのですが、皆さんは「そのリスクを最小限に抑えるために専門家を使うんだ」くらいに考えてください。
なぜそのようにお勧めするかというと、「書いてみて初めてわかること」があるからです。
まず書いてみて、いろいろな思いを巡らせて、知識を身につけて、書き直して・・・お気持ちが固まったところで公正証書遺言を作っても遅くはありません。
私たちは、「専門家の常識」を押し付けることはしません。お客様の状況とお気持ちに最適な方法を選択していただき、そのリスクを可能な限り低減する戦略を考えます。
発想を変えましょう。遺言は気軽に書いてよいのです。そして、いつでも見直せるのです。専門家の知識と智恵を使いながら。
(谷口 一郎)